第88回大阪大学機械工学系技術交流会開催のお知らせ(2017年12月1日)
第 88 回 大阪大学工業会機械工学系 技術交流会
— 阪大機械系の産学連携・シーズとニーズ 現状と展望 - および 博士後期課程学生発表
【趣旨】大学は新たな知を生みだし,学理を深め,体系化し,そして広く社会に普及する役目を担ってきました。これからもその役目は変わることはなく,むしろ,ますます重要になると思われます。しかし,知のスペクトルと拡がりは,経済,産業,技術の多様化とグローバル化とともに,大きく変化しており,その役目を果たすためのしくみには,大きな変革が求められています。これまでの「知の普及」だけではなく,「知のリソース」の多様化と「知の揺籃」の拡がりを担う,新しい産学連携のしくみも模索されはじめています。
そこで本講演会は,阪大機械系,すなわち機械工学専攻と知能機能創成工学専攻の産学連携やシーズ/ニーズを紹介し,新たな人材育成の観点からの考え方について講述いただきます。
日 時: 2017 年 12月 1日(金) 13:30 ~ 17:30
会 場: 大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻
M4 棟 講義室(2F-201 講義室)
http://www2.mech.eng.osaka-u.ac.jp/access/
----------------------------《スケジュール》----------------------------
13:00~ 開場・受付
13:30~14:00 博士後期課程学生発表会
「フォトニックナノジェットを利用した 3 次元微細加工に関する研究」
上野原 努 君
「飛び移り座屈を用いた群ロボットの移動機構に関する研究」
Mak Kwan Wai 君
14:00~15:00 機械工学専攻の産学連携・シーズとニーズ
「複合流動工学領域の産学連携・シーズとニーズ(仮題)」
複合メカニクス 教 授 田中 敏嗣 氏
「大型作業機械システムの動的モデリングと制御」
複合メカニクス 教 授 石川 将人 氏
「弱い相互作用が切り拓く新たな精密計測の世界」
マイクロ機械科学 准教授 水谷 康弘 氏
「微粒子混合による液体の熱物性変化:水から高温融体までの適用例」
マイクロ機械科学 助 教 植木 祥高 氏
15:00~15:30 コーヒーブレイク
15:30~16:30 講演
「知識生産とイノベーションのモード:融合から統合へ
~ オールラウンド型博士人材育成からの知見 ~」
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻統合デザイン工学 教 授 藤田 喜久雄 氏
16:30~17:30 機械工学専攻、知能機能創成工学専攻の産学連携・シーズとニーズ
「化石燃料の大量消費と環境問題を解決するためのエネルギーキャリア戦略
~水素社会の実現を目指して~」
マイクロ機械科学 教 授 赤 松 史 光 氏
「LiVEMechX:生命機械融合ウェットロボティクスが拓く超スマート社会」
知能機械学 特任助教 上杉 薫 氏
「超小型衛星が変える宇宙開発」
知能機械学 助 教 莊司 泰弘 氏
「薄膜の不安定現象を積極的に利用した機能人工物の開発」
知能機能創成工学専攻 マイクロダイナミクス 助 教 永島 壮 氏
----------------------------------------------《講演概要》---------------------------------------------
講演1の概要:
「複合流動工学領域の産学連携・シーズとニーズ(仮題)」
「大型作業機械システムの動的モデリングと制御」
: 油圧ロボットや建設機械などの大型作業機械システムは,それ自身が大規模でモデリングが困難であることに加えて,過酷な環境で運用されるために複雑かつ不確定な対象を相手に作業しなければならない.本講演では,これらの問題にシステム同定理論や機械学習の手法を適用した産学連携研究の例を紹介し,システムの入出力関係をマクロに,かつ動的に捉えるモデリングの重要性を論じる.
「弱い相互作用が切り拓く新たな精密計測の世界」
: 量子論に関連のある弱い相互作用は,SN 比の観点から産業応用が困難でした.しかし, 近年,弱い相互作用を顕在化させる手法が生み出され,様々な場面での応用が可能になりました.本講演では,表面粗さ計測や高感度画像計測に応用し,高精度計測が実現できた例を紹介します.
「微粒子混合による液体の熱物性変化:水から高温融体までの適用例」
: ナノスケールの微粒子を液体の熱伝導率や比熱といった熱物性を変化させることが可能であることが分かり,幅広い研究がなされてきた.本講演では,ベース流体に従来の水を用いた微粒子懸濁流体から高温融体を用いるものまで最新の研究例を紹介します.
【講 演】
「知識生産とイノベーションのモード:融合から統合へ
~ オールラウンド型博士人材育成からの知見 ~ 」
:Connecting the Dots - スティーブジョブズが残した名言である。さしずめ、Dot は個別的な知識、Connected は製品などの全体像になるのであろう。彼が当時のスタンフォードの卒業生に対して意図したことは、目の前の Dot を無心に吸収することが重要であり、頑張っていけば、やがて Connected がやってくるということであろう。しかしながら、イノベーションの重点が改良型から破壊型に移ってきた今日、Connected が起きるには然るべき場や規範、方法論が不可欠であり、Dot の“融合”だけではイノベーションにはつながらず、全体像を構想したり実装したりする“統合”こそがその鍵であること、また、そのような統合が新たな Dot の生産に際しても重要な糸口になることが浮かび上がってきている。
本講演では、あらゆる専門分野を統合する学位プログラムの構築が要請された文部科学省博士課程教育リーディングプログラム・オールラウンド型での知見を引きながら、今後の知識生産とイノベーションのモードについて考えてみたい。
「化石燃料の大量消費と環境問題を解決するためのエネルギーキャリア戦略 ー水素社会の実現を目指してー」
: 私たちが利用しているエネルギーの約 9 割は,石油,天然ガス,石炭などの化石燃料を燃焼させることによって生み出されています.しかしながら,近年,化石燃料の大量消費により,地球温暖化などの地球規模の環境問題が起こっています.この問題を解決するために,太陽光,太陽熱,風力等の再生可能な自然エネルギーを用いて,化石燃料を代替するエネルギーキャリアのバリューチェインを構築するための研究開発が,大型国家プロジェクトとして推進されています.本発表では,化石燃料の大量消費と環境問題を解決するためのエネルギーキャリア戦略について,最新の研究成果を引用して説明させていただきます.
「LiVEMechX・生命機械融合ウェットロボティクスが拓く超スマート社会」
: 石油や電気の化石燃料や内燃機関等動力源に頼らず,生体や自然環境のエネルギーを取り込むことで駆動できる機械システムが実現できれば,省エネルギー効果は絶大で,IoT,AI,ヒト,自然,人工物がすべて調和した超スマートな持続可能社会を実現できる.これまで, マイクロナノマシン,バイオナノテクノロジー,メカトロニクス,ウェットロボティクス,分子ロボティクス,自己組織化原理,AI を駆使して,生体エネルギー変換型生命機械融合システムを開発してきた.デバイスの駆動原理が電気を用いず化学エネルギーのみによる駆動であるため,省エネルギー効果は絶大である.製造業だけでなく,ヘルスケア,医療,農業,海洋,環境モニタリング等に革新的な変化をもたらし,化学,ライフサイエンス,IT 情報サービス産業を融合した,全く新しい価値を創造するビジネスモデルと新たな雇用を生み出す,バイオニック産業を創出し,生物が発展し,進化し続けてきた超長期的な持続可能な超省エネ型ものづくりが実現でき,食料問題,人口問題,環境問題, エネルギー問題を解決できる.このような新たな価値を創出するための方法として,生物と人工物の新しいハイブリッド化技術の確立を目指し,従来の「バイオミメティック」から「細胞・生命そのものを用いたものづくり」へのパラダイムシフトを試みてきた.生物−機械・生物−電子・生物-分子間のインターフェース技術により,様々な生物機能を人工システムに取り込むことができる.本講演では,超高齢化社会・人と機械が共生する超スマート社会を指向した研究開発,生体のように柔らかい生命機械情報システム,ソフト&ウェットロボティクス設計論構築や医療用・環境適応マイクロマシン,超微量生体分析装置,組織構築,バイオアクチュエータ,ナノマシン,細胞内計測等の研究展開について紹介する.
「超小型衛星が変える宇宙開発」
: 1 辺 10cm 角,質量 1kg で 2002 年に初打ち上げされた CubeSat は,世界中で開発,打ち上げが続いています.その目的も学生や技術者の教育から,新技術実証や実応用へと変化してきました.本講演では,今年打ち上げられた 3UCubeSat EGG を例に,阪大での取り組みと近年の超小型衛星の動向について紹介します.
「薄膜の不安定現象を積極的に利用した機能人工物の開発」
: 大ひずみを受ける材料に生じる不安定変形現象は,多様な幾何学的変形モード生み出すことが知られています.特に,ナノ・マイクロ薄膜におけるそれは,微細周期構造の自律形成を誘発するパターニング技術として注目され,その工学的応用が期待されています.本講演では,硬質薄膜の座屈現象を利用した機能表面の設計や高性能デバイスの開発に関する取り組みを紹介します.
以上
——————————————————————————————————————————————————————————
大阪大学機械工学系技術交流会 事務局
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2番1号 大阪大学大学院工学研究科 機械工学専攻内