メッセージ
機械工学専攻長 小林 英樹
大学を取り巻く環境は大きな変化の中にあります。
その論点は、研究の出口と社会との関係性、国際的な大学間の協調と競争、大学の個性化、研究教育における人材の多様性確保など、様々です。昨今は、道具としての実用性を増した生成AIやデータサイエンスが研究教育に与える影響も話題となっています。
機械工学専攻という組織が進むべき方向に関しても様々な考え方が可能です。将来を見越して何らかの意図をもって重点領域を設定するという考え方もあり得ますが、一方で、人口予測を除き人間社会の不確実性は長期予測困難な程に大きいということも事実です。世の中の急激な変化に対して拙速に反応するのでなく、むしろ急激な変化の時代でこそ、自分たちの視座を定めて着実に進んでいくことも一つの考え方であります。なぜなら、学術とは仮設形成とその検証を地道に積み上げていく営みであり、その地道さを軽んじてはいけないからです。
大阪大学の大学院工学研究科機械工学専攻および工学部応用理工学科機械工学科目では、いわゆる四力(材料力学、流体力学、熱力学、機械力学)、制御、設計生産から成る伝統的な機械工学の学術基盤をもとに機能構造学、熱流動態学、統合設計学、知能制御学、という四つの系に組織再編し、内発的動機に基づく最先端の研究を展開しつつ、研究成果を教育に還元する大学院教育プログラム、および学部教育を展開しています。さらに、社会に開かれた専攻として、大阪大学工業会機械工学系技術交流会を企業会員の皆様と共に運営し、産学連携を深めています。こうした営みは、阪大機械が機械工学という総合的な学術に真摯に向き合って歩んでいる姿勢の表れだと考えています。
阪大機械は機械工学の大河を標榜し、充実した研究教育環境を整えて皆様を待っています。