研究室

熱流動態学系|流体物理学領域

竹内研究室

研究室HP

竹内 伸太郎(教授)、岡林 希依(助教)

アイキャッチ画像
  • 竹内研究室とは?

    さまざまな「流れ」を予測し、制御する。

    「流体」というと液体や気体のような物質を想像するかもしれません。しかし砂時計の砂や粉末状の薬剤のような固体や、あるいは氷河・地殻も長い年月で見ると、流体のような振る舞いをしますし、血液を顕微鏡で拡大すると多数の血球を含んでいることがわかります。この研究室では、このような日常生活から工業装置内や自然現象に見られるさまざまな「流体」の「流れ」に共通する物理現象を研究しています。

    流れの現象には未解明の問題が多く残されており、この研究室では数値シミュレーションによる「予測」と数式を用いた「モデリング」をとおして流れ現象の理解を深め、「制御」によって工学的に役立てる、という三つを意識して研究しています。

    飛行機や高速列車を一例に挙げると、機体や車体の周囲を空気がどう流れるのかを予測し、それを数式で表現するモデリングをとおして、揚力・推力を上げたり騒音を減らす制御につなげていくのが、一連の研究の進め方です。

    このほか研究室では、飛翔生物の生態が停空飛翔主体から滑空主体に変化すると翅はどういう形に進化するのか、毛細血管中を自律的に動く医療機械を創る際には流れ現象の何に着目すべきか、というような挑戦的な問いを学生の皆さんに投げかけ、既成の考えにとらわれない議論をしています。

     

  • 研究室のユニークPoint !

    複雑な「流れ」を数値シミュレーションで解く。

    「流れ」の予測や制御は、工業製品の製造やエネルギー・環境など、さまざまな生産工程や自然現象・社会問題に対して重要な技術です。しかし、流れの多くは大小さまざまな渦が入り混じった複雑で乱れた状態であり、予測も制御も非常に難しいのが現実です。

    そこで、この研究室では数値シミュレーションを採り入れています。シミュレーションが特に有効なのは、実験では実施することが難しい設定を試せる点です。たとえば、百年後の地球環境を予測するとか、人間にとって危険な設定、重力や流体抵抗がない設定などです。この意味で、数値シミュレーションは「数値実験」とも呼ばれます。

    世界初の電子計算機エニアックは弾道軌道計算に利用されましたが、その後、高速に進化した計算機の発展を支えたのは、気象・気候変動予測や航空宇宙など、いずれも流体が関連する分野です。2021年のノーベル物理学賞が気候変動の「数値実験」の業績に与えられたことは、記憶に新しいでしょう。

    また航空機の周りの流れを例にとると、翼表面近くの流れと機体全体スケールの流れは性質が大きく異なり、これら全ての物理現象を一つの数値シミュレーションで再現することは近い将来においても非現実的です。そのため様々な理論的な仮定を導入して「数値実験」を行うのです。研究室では、そこから重要な現象の原因と結果を推定して数式で表し、制御の可能性へと結び付けていきます。グラフィックスを用いて可視化された美しい画像は、その研究を補助してくれます。

    研究を続けていると、流れを「理解できた」と感じる瞬間に立ち会うことがしばしばあります。たとえば、難しい流れの問題を数値シミュレーションで解く方法を考えてうまくいったとき、複雑そうに見えた流れを表現するシンプルで美しい数式を思いついたとき、制御をかけて乱れを抑えられたときなどの喜びはとても大きいものです。

    研究室の先輩と議論し、少しずつ経験を積みながら、知の喜びを感じていって欲しいと思います。

  • 研究室の先輩メッセージ

    社会への応用がイメージできる研究。

    • 赤木優太(大学院修士課程2年生)

    上下水道局などで使われているポンプなどに生じる流れについて研究をしています。ポンプ内で発生する渦による抵抗を小さくすることで、少ないエネルギーで水を送り出せないかというのが研究動機です。運動方程式を数値シミュレーションにより解いて得た渦を可視化するのですが、研究の結果、抵抗の原因であった渦を消す制御方法を見出すことができました。低コストで水を送り出す一つの方法を提案することができ、自分の研究が世の中に役立ったのではと、やりがいを感じています。

    • 永松紘汰(大学院修士課程2年生)

    薬品など試料の成分分析を行う場面では、試料にホコリなどが混ざったり成分が変化しないように細心の注意を払う必要があり、試料を「浮かせて」分析を行うニーズがあります。そこで私は「移動壁面上の液滴浮遊現象のシミュレーション」をテーマに研究を行っています。液滴が壁面に付着せず浮き続ける現象をシミュレーションし、液滴と壁の間にある数マイクロメートルの空気の層に発生する速度と圧力を解析します。長く浮き続けられる条件を確立することができれば、調剤や試料分析の分野において新規提案が可能だと考えています。

    • 岡崎陽樹(大学院修士課程2年生)

    多くの機械には回転する軸があり、例えば車にはタイヤを取り付けて車体を支える「車軸」があります。車軸が回転するとそれを支える軸受との間に摩擦が生じてしまいそうですが、その隙間に封入された流体が圧力を発生させ、軸と軸受の接触を防ぎ、かつ車体の重さを支えています。わたしはこの圧力に関して研究を行っています。上述の車軸の例に限らず、より一般的な形状の隙間で圧力分布を求めることができる方程式の確立を目指しており、最初は複雑に見える数式をより簡略化していくプロセスは楽しいです。

    • 柴田寛之(大学院修士課程1年生)

    研究室内でシミュレーションや可視化を扱うことが多く、学生のうちからプログラミングの経験を積むことができるのも研究室の魅力だと思います。先輩や社会人の方からは、「学生時代にもっとプログラミングの経験を積んでおけばよかった」「卒業してからもよく使うんだよね」という話をよく耳にします。プログラミングに心理的抵抗がないことと数理モデリングを結びつけた方法論が、自主的に研究を進める力になっていると思います。

     

熱流動態学系

流体物理学領域|竹内研究室

研究室HP

竹内 伸太郎(教授)、岡林 希依(助教)

Pagetop